くりぃむぱんのゼロから始める新生活 vol.1
朝が来て夢から醒めるように。
夜が来て陽の光が沈むように。
人はいつか大人になる。
否応無く。
大人になったのだと、誰かに課せられて。
始まってしまった、新生活。
本当はあともう2,3回くらい大学に出たり入ったりを繰り返したいと私は思っております。
最悪、偏差値低めのテキトーな大学を見繕って、そこの受験で点数無双すれば、学費免除の奨学生として憂いなく大学生活の2周目が行えるかもしれないけれど。それでも最低限の生活費は稼がねばならず、結局は悪しき労働の道が眼前に広がる事となるのデス。
4月1日と言えばエイプリルフール。
おまけで新年度の始まりの日。
自分も含め、多くの若人たちが非情なる時の流れによって社会の荒波へと放り出されてしまう日なのであります。
今まで陸でぬくぬくのびのびと楽しい日々を送ってきたはずなのに、何故今日を境に海の上へと放り出されなければならぬのか。
せめて、百歩譲って海に送り出されるとしても、クルーズ船くらいは用意して欲しい。でないと死ぬ。あっという間に舟を転覆させられて、暗い水底にずぶずぶ溺れていってしまう。
圧倒的に、生きる才能が足りていない。
放置されれば餓死なり何なりする自信がある。
メシが作れない。
空腹に耐えかねてスーパーでポテチとかオレンジジュースとかを買ってきて食べるかもしれないけど、残念ながら人間が生存するための栄養をその二種で補うことはできないとされている。健康ってめんどくさいねえ。
それでもまだ生きてはいたいので、なんとかして可及的速やかに、自活能力を獲得せねばならない。ということで、今日から頑張って生きる訓練をすることにする。
「彼を知り己を知れば百選危うからず」とは孫子の言葉。
この場合、彼とは生存に必要な栄養の数々。そして己とは、それを摂るために自身が用いられる能力を指す。とりあえず彼、当面の目標は「一汁三菜」の食卓と定め、これに立ち向かう手札は現状で二つ。炊飯とレンチンだ。
レンチン以外の加熱手段は持っていない。
フライパンは先日、百貨店的なお店で買ってきたものの、使い方がわからない。火の上にフライパンを置けばそれで完了なのか? それで、焼きたいものをフライパンに落とすと? よくわからん。お好み焼きをひっくり返すのは得意なのだがな。どのようなプロセスでお好み焼きが焼かれていたのか知らぬ。油とか敷くんだっけ?
できることをできる範囲内でやる。
これこそ我が信条。
冒険は良くない。まずはレンチンで経験値を積むべきである。
偉大なる電子レンジがもたらす恩寵。即ち、解凍と加熱。
今回はコレを活かし、第一次自炊戦争を行ってみた。
先鋒は炊飯。
実家から持ってきた米を一合、ヨドバシで購入した炊飯器で炊く。
白米の炊き方はあらかじめ、一昨日あたりに母親から習っておいたので万全。水で3回洗って、炊飯器にセットするだけ! この際、お湯は使ってはいけないらしい。どうせ炊くんだから、多少水が温かくても良いような気がするけど従っておく。
中堅は副菜。
スーパーで買ってきた冷凍オーガニックブロッコリーがエントリー。レンチンの解凍スキルを使用。わずか3分で冷たいブロッコリーが食べられるブロッコリーに! しかも、食べきれなかった分は冷凍庫で保存できるらしい。便利だ。
大将は主菜。
ここにはとっておき、業務スーパーで仕入れたレトルトカレーを立てる。野菜と果物が溶け込んだ中辛カレー。きっとビタミンやら何やら、重要な栄養価をさぞ貯め込んでいることだろう。健康の糧となるがよい。
この三本槍が集結した姿がコレだ。
立派な食卓じゃあないか。
紛れもない勝利であろう。
レンジ強すぎでは? ぶっちゃけ、お米も冷凍してあるヤツをチンすればいいし。
もう、何も怖くない。
ということで、スキルツリーにおける初級レンチン調理術が解放された。
次は中級レンチン調理術。
目指すは冷凍したお米の解凍!
――俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。