6月、社会人3ヶ月目

向暑の候、皆さま如何お過ごしでしょうか。

 

私は今、労働という苦役に日々心身を圧迫され絶望の淵にいます。

 

ごく一部の社会不適合者の期待を一身に受けて東京へと羽搏いたCOVID-19くんですが、誠に遺憾なことにさしたる猛威を揮うことなく、いつのまにか第一波は終息させられてしまいました。

学校に行きたくなかった学生時代、何なら一切の外出すら煩わしかったあの頃は、突如として高濃度の光化学スモッグが発生することで誰も外に出ちゃいけなくなる世界になれば学校に行かなくて済むのになァと、欠伸混じりで授業中によく妄想したものです。それがまぁ、ウィルスによって10年弱越しに現実のものとなったのですから、首都封鎖だなんだと話を聞いた時にはワクワクが止まりませんでした。

しかし、いざ蓋を開けてみれば緊急事態宣言が発令されようとも会社は出勤を命じてくるし、電車はずっと動きっぱなしだし、そのくせ密室空間でしか数を増やせないコロナくんは思った以上に感染を爆発させないしで、妄想に対して現実というものは存外頑なにレールの上を進んでいくものなのだと痛感しています。

現実社会では幾千万幾億人という膨大な数の人間が実際に社会の歯車を回しており、その重みはちょっとやそっとの強風では引っ繰り返るなんて事はないのでしょう。多少は大きい揺れがあったり、線路の上で一時停止をしたりはするのかもしれませんが、いずれ電車は人々を先々の駅へと運び去っていくのです。

つい先日、冷凍保存用の餃子をしこたま拵えていた際に、一人暮らしでは退屈を紛らわす会話相手もおらず、仕方がないので映画の『The Mist』を暇つぶしに初めて観てみましたが、あれほど凶悪だった怪物たちがラストでは軍隊によっていとも簡単に駆除されていってしまったのは、コロナくんの現状を想起させて涙なしには観られませんでした。怪物を避けて閉じ籠っているのが正解だったという、ステイホーム推進にはぴったりの作品だったと思います。あ、まだ結末を知らない人にはネタバレしちゃってごめんね。

 それにしてもあのラストは考えさせられるところが多くて。そりゃ主人公も絶叫したくもなりますよ。辛く苦しい日々の中で今まで心の支えとなってきた映画館やカラオケ、国会図書館コミケたちばかりがコロナに殺されていき、何の楽しみも無くなって苦しみだけが残った世界で、じゃあ俺をコロナに感染させろよ! 出来れば陽性の無症状患者として、ホテルで二週間くらいゆっくり読書とかゲームさせろよ!! とTwitterで叫び倒したって、今や実効再生産数の落ちたコロナくんは焼き尽くされていくばかり。仲間たちと怪物が失われた世界で、それでも今日と明日を生きていかなくっちゃあならない。そもそも、颯爽と現れて怪物たちを焼き払っていく米軍、異次元へのゲートを開いて怪物たちを呼び寄せたのもキミたちの実験が失敗したからだったんじゃないの? とい不満も残ってしまいますね。

さて、来年の新卒の方々はコロナに翻弄されつつも、なんだかんだで採用不採用の結果が届きつつある時期になってきたかと思いますが、一つ前の年の新卒として先輩ぶったアドバイスを言わせてもらうのだとすれば、自分の就職する会社を、人事のお姉さんがカワイイかどうかなんていうクソみてぇな理由で決めてはいけませんよの一言に尽きます。私はそれで失敗しました。

人事のお姉さんがカワイイかどうかで就職先を決めてはいけない理由は、賢明な諸氏なら深く熟考を重ねることで幾つか思い当たるものが出てくるかもしれませんが、敢えて説明させてもらいましょう。

第一に、新卒が顔を合わせることになる人事部の人間とは、企業説明や採用面接、内定者研修を業務の主な担当としている事がほとんどで、いざその企業に就職したとなったら、99.9%はもう二度と会う機会は無いだろうからです。そう、会社に入るためのモチベが、会社に入った瞬間に掻き消えるという悪魔のような大事故。しかもそれで、貴重な新卒チケットを消費してしまったとなれば、挽回は並大抵では出来ません。もう一度どこかの大学に入学しなおして、再度卒業する学歴ロンダリングが必要となってきます。

第二に、人事のお姉さんがカワイイという事ばかりに気を取られると、待遇や業務内容に関する調べが疎かとなり、現場に配属されてからなんじゃこりゃこの仕事は!? となるのが必至です。たぶん自分にまともな理性が残っていれば、年間休日105日とかいう脳に蛆が湧いてるような職場を良しとはしなかったでしょう。BtoC業界がホワイトなわけねぇだろうが……! 固定残業手当とか正気か?? せめて仕事に対して法律で定められている賃金はきっかり支払うのが道理だろうが。行政相手に上手く節税していきましょうってのとはワケが違ぇんだぞ。

最後に第三なわけですが、他人を容姿で判断してはいけないという至極真っ当な人間としての倫理観のお話です。カワイイから、カッコいいからで人に良し悪しを付けてはいけないのです。内定者研修時代は目を輝かせて出席していたのに、就職後の社員研修では担当が変わって、しかも顔もそんなにまァそうでもないから行きたくねぇなァと考え出すのは以ての外なのです。いいですね?

さて、これから就職をする方々、或いはもう就職した諸氏はいったい今、如何にして日々をお過ごしなのでしょうね。どんな職場で働いて、どんな社会人になっていくのでしょう。その未来が、夏の陽射しのように明るく眩しいものである事を祈ります。

 

あ、自分ですか?

自分は夏が終わる頃には社会人を辞めようと思います、ハイ。